上平 奈々の世界

上平 奈々(うわだいら なな)

東京都出身。洗足学園音楽大学音楽学部作曲コース卒業。
3歳からピアノを始め、クラシックピアノを青木肇、田中拓未、高橋裕希子、ジャズピアノを青柳誠、作曲を土屋洋一、久行敏彦、清水昭夫各氏に師事。
クラシック音楽のみならず、ポップス、ジャズ、ラテン音楽、ミュージカル、映画音楽、吹奏楽、現代邦楽、民族音楽等の多岐に渡る音楽にも興味を持ち、それぞれの作曲法についても研究中。及び、歌曲、合唱曲などを作曲する際には言葉の音節とメロディーとの関連性にも気を配り、歌いやすく、言葉の響きの持つ美しさも重視した歌曲、合唱曲を作ることを信条としている。

2022年度

作品発表演奏会
 日時:2022年12月19日(月)
 会場:前田ホール

Sous les arbres des érables

タイトルの「sous les arbres des érables」とは、フランス語で「紅葉(楓)の木々の下で」という意味である。
冒頭、提示部のmoderatoのヴィオラとチェロの旋律は、長い夏が終わり、秋の訪れと共に、葉が徐々に赤く色づき始めていく様を描いた、叙情的な旋律となっている。
moderatoからallegroに変化すると、冒頭の叙情的な旋律とは対照的に、まだ色づき始めていない青葉が強い日差しを浴びながら、ほのかに香る残暑を感じさせる明朗快活な旋律となっている。
展開部では徐々に怪しげな雲行きになり、嵐が訪れ、紅葉の木々も自然の脅威にのまれていく。
弦、管、打楽器で豪雨を表現しているが、その後、雲の隙間から光が見え始め、木の葉の先からは陽の光に照らされた雨粒が一滴滴り落ち、またあの明朗快活な旋律へと戻っていく。
最後に冒頭の旋律を再現し、日に日に赤い色合いが増していき、紅葉の葉が完全に色づき、見頃になるまでまたしても展開していく。と同時に、これから訪れる長い冬を予感させる儚さも兼ね備えて盛大に終わる。
余談であるが、私は散歩をするのが好きだが、とりわけ秋の紅葉狩りの時期に街中を散策をするのが最もお気に入りである。何故なら、この時期の日本の木々の美しさは格別だからである。
この真っ赤に染め上がった木の葉から見える木漏れ日と、それとは対照的にもうじき散ってしまうという儚さに揺らぐ紅葉の葉の心情の対比を感じながらお聴きいただけると幸いである。

2021年度

作品発表演奏会
 日時:2021年12月20日(月)
 会場:前田ホール

弦楽四重奏曲 第一番

今作、「弦楽四重奏曲第一番」は、本年夏の作曲コースの録音録画会に先だって発表していた第一、第二楽章に今回新たに制作した第三楽章を加え、全楽章を通しての発表となる。
第一楽章は、A dur で全ての楽器がユニゾンから始まる楽章である。相次ぐ緊急事態宣言などで暗いニュースが相次ぐ中、少しでも前向きになれる曲を書きたいと思い、el esperanza(スペイン語で「希望」の意味)をモチーフに制作した。
第二楽章は B dur で快活なメロディに沿って展開される楽章である。el amanecer(スペイン語で「夜明け」の意味)を意識して制作した。一日の中で最も美しい時間帯は晴れの日の夜明けであり、清々しい一日の始まりを告げるとても大切な瞬間である。昇りゆく太陽のような力強さと、日々を精一杯生きる大切さを感じとってほしい。
第三楽章は、再びA durで、しかし今度はそれまでとは打って変わってゆったりと始まる緩徐楽章である。
Brisa suave(スペイン語で静寂なそよ風の意味)をイメージしながら制作した。そよ風のように静寂でゆったりとした暖かい時間が流れていく様子を想像していただければ幸いである。


作品発表演奏会
 日時:2021年12月20日(月)
 会場:前田ホール

上平 奈々(編曲) : E.グリーグ作曲「 抒情小品集」より《アリエッタ》《 祖国の歌》《 想い出》

原曲は、グリーグの「抒情小曲集」の中に含まれている、とても美しいピアノ曲である。
私はノルウェー人ではないが、ノルウェー人としての誇りを忘れず、祖国を愛してやまなかったグリーグのような芸術家を非常に敬愛している。グリーグの曲には、ノルウェーの国土の70%を占める岩石、湖沼などの大自然、更にはフィヨルドの雄大な絶景などをイメージしながら作られた痕跡が随所に見受けられるのだ。その他にも、古来から伝わるノルウェーの民謡などの収集家でもあったようで、ノルウェー愛がひしひしと伝わって来るのである。
これらの曲を編曲するにあたり、私もグリーグのように、自国人としての尊厳を保ち、伝統を重んじ続けることの出来る人間でありたいと感じている。


録音・録画会 in Summer 2021
 日時:2021年8月31日(火)
 会場:シルバーマウンテン1F

la esperanza,el amanecer

第一楽章のla esperanzaはスペイン語で「希望」という意味である。相次ぐ緊急事態宣言などで暗いニュースが相次ぐ中、希望が感じられる曲を書きたいと思った。第二楽章のel amanecerはスペイン語で「夜明け」という意味である。一日の中で最も美しい時間帯は晴れの日の夜明けであり、一日の始まりを告げるとても大切な瞬間である。昇りゆく太陽のような力強さと、日々を精一杯生きる大切さを感じとってほしい。