蓮田 望美の世界

蓮田 望美(はすだ のぞみ)

カナダ出身、日本人の父と香港人の母をもつ。
上智大学経済学部経営学科卒業後、商業不動産の会社に就職。財務を通してキャリアを積むが、音楽家を志し退職。作曲を齋藤圭子、相澤直人に師事、ピアノを新屋里沙、古川貴子に師事、バイオリンを中一乃に師事。
上智大学在学中、葉加瀬太郎作曲「ひまわり」をクラシックギターアンサンブルのために編曲し、渋谷区文化総合センター大和田さくらホールで演奏され好評を博す。
混声合唱団Albaporta団員として活動中。

2022年度

作品発表演奏会
 日時:2022年12月20日(火)
 会場:シルバーマウンテン1F

女声合唱のための12のエスキス《のはらうた》より
「いちめんの ゆき」「あまえる ゆめ」「かわあそび」「おいわい」

「のはらのみんなのだいりにん」こと工藤直子さんが、「のはらのみんな」のおしゃべりやうたをかきとめてできた本、それが「のはらうた」。なんてロマンチックな詩集でしょう!ページをめくると、いきものたちはもちろん、そらやうみ、かぜの呼吸でさえ聴こえてくるようです。そんな詩集から詩を選び、四季折々の曲を12ヶ月分つくることにしました。女声合唱のための12のエスキス「のはらうた」の誕生です。エスキスとは、フランス語で下絵を意味します。教会旋法や全音音階を用いた習作を多く含んでいることから、そのような曲名にしました。
今年度の作品発表会では、こゆききよこ と こなゆきみゆき作詩「いちめんの ゆき」、こぐまじろう作詩「あまえる ゆめ」、あらいぐまげん作詩「かわあそび」、にじひめこ作詩「おいわい」の4曲をおとどけします。何月の曲なのか想像しながら聴いてみるのがおすすめです。


録音・録画会 in Summer 2022
 日時:2022年8月30日(火)
 会場:シルバーマウンテン1F

混声四部合唱《しあわせの小径》

詩画集「しあわせの小径」との出逢いは、北鎌倉にある葉祥明美術館であった。葉祥明先生は熊本出身の画家・詩人で、熊本育ちの私は、作曲部屋に飾る絵を買うべく、美術館のショップに足を運んだのだった。
美術館で私の目に留まったのは、絵画とともに飾られた詩であった。風景のような詩、なんだか懐かしいような詩・・・その中で、音楽のような詩に出逢ったのだ。頭の中でメロディーが、和音が鳴った瞬間であった。
かくして私はショップにて額絵と詩画集を購入するにいたった。そしてピアノの前に額絵を飾り、曲をかいた。合唱曲「しあわせの小径」の誕生である。比較的自由な和声進行により、「時のうつろい」のようなものをうまく表現することができた。聴く人の心に訴えかけることができれば幸いである。

2021年度

作品発表演奏会
 日時:2021年12月21日(火)
 会場:シルバーマウンテン1F

陣中日記

曽祖父である蓮田善明の著書「陣中日記」の詩を用いて作曲した。「想い」「偶詩」「紙風船」の3曲で構成されている。
「陣中日記」はその名の通り、曽祖父が戦地に赴いた際に書かれた作品である。いずれの詩も情景が目に浮かぶような詩である。しかし、文学的背景を鑑みると、作曲に際して、ただの美しい曲に仕上げるわけにはいかなかった。
曽祖父は中学教師であったが、古典研究への想いやみがたく、教職を辞して広島文理科大学へと進学。
「みやびの精神」を追求した曽祖父の作品はいつも「死」とともにあった。それは、前向きな「死」である。
「如何に生くべきか」と「如何に死すべきか」。この2つの問いの本質は表裏一体であると、曽祖父は考えていたようだ。「陣中日記」は、おそらく死を覚悟した者の立場からみた景色そのものであろう。しかし、曽祖父にとっては、同時に最も「生」を実感し得た時だったようである。
前述の通り、「ただの美しい曲」にならないように作曲したつもりである。戦時体制下にあって古典の伝統の復活を説いた曽祖父の作品は、戦後黙殺の状態であったが、その時代から距離を置いた今、微力ながら作品に新たな息吹をもたらすことができれば幸いである。


録音・録画会 in Summer 2021
 日時:2021年8月30日(月)
 会場:シルバーマウンテン1F

麦藁帽子

本作品は、ソプラノ歌手とピアノ伴奏による歌曲である。詩は、昭和初期に活躍した詩人、立原 道造(たちはら みちぞう、1914年-1939年)による草稿「麦藁帽子」。眺めるだけで夏の薫りが立ち昇ってきそうな、大変美しい詩である。
作曲にあたり、詩の美しさをそのまま表現すべく、日本語のもつリズムをソプラノ歌手によるメロディーに表現した。また、ピアノ伴奏をメロディックに仕上げ、歌とピアノが呼応するような音楽を目指した。

Lascia ch’io pianga

ヘンデルの作曲したオペラ《リナルド》(1711年)の中の有名な一曲、アルミレーナの叙唱・アリアと同じ詩を用いて、ソプラノ歌手とピアノ伴奏による歌曲を作曲した。
宗教対立の末、囚われの身になったアルミレーナは敵軍の王に求愛されるが、愛するリナルドへの貞節を守るため「過酷な運命に涙を流しましょう」と歌う。アルミレーナはリナルドの助けを待ちながら涙を流しただろう。しかし今回は、哀しみに暮れつつも自らの力で脱出を試みるような強い女性を表現しようと考え、エネルギッシュな曲に仕上げた。危機的状況を自身で突破する、現代的なヒロインの歌である。ヘンデル作曲のものとは全く別の「21世紀版」として聴いて頂ければ幸いである。