藤﨑 諒の世界

2020年度

作品発表演奏会
 日時:2021年1月14日(木)
 会場:洗足学園 前田ホール

静かの海を見上げて

地球の唯一の衛星である月の表面には幾つものクレーターや山を始め、海などに例えられる地形もあり、その1つ1つが地名を持つ。『静かの海』は、北半球から観ることのできる餅つきをするウサギの、ちょうど顔に該当する場所のことを指す。
晩夏の夜の帰り道、脳裏に作りかけの旋律を流し続けていた私は何気なく見上げた空に輝く月に気を取られ、直前まで考えていた旋律の大部分を忘失した。しかしそれを許してしまえるほどにその月は神秘的で、現在の興奮こそ音楽にしたい、と考えたことが今回の楽曲のきっかけとなった。
可愛らしい小動物が軽やかに駆けているような旋律と不意に浮遊感を与える借用和音にうっとりとしながら、ピアノとヴァイオリンの優美な音色で当時の高揚感を表現しようとした作品である。


録音・録画会 in Summer 2020
 日時:2020年8月31日(月)
 会場:シルバーマウンテン 1F

O cessate di piagarmi

この作品は、元々「歌曲作曲研究Ⅰ」という授業で作った楽曲でした。
歌曲作曲研究は、歌曲について勉強したり、授業の中でイタリア歌曲やドイツ歌曲などの歌詞を用いて歌曲を作り、それを先生に歌っていただきながら何週かに渡って作品の完成を目指していく、という形で授業が行われています。
今回の曲『O cessate di piagarmi』は、アレッサンドロ・スカルラッティ作曲のオペラである『ポンペオ』のセストのアリアで、作詩はニコロ・ミナートです。直訳すると”私を傷つけるのやめるか”という意味になり、僕はイタリア語の対訳から重々しく苦しそうな雰囲気を感じたので、このような曲になりました。避けられない大事な出来事と向き合うため苦悩している様子を表現したつもりです。
歌唱とピアノの演奏を快諾して下さった春日杏さんと小山めいさんに心から感謝しております。

Lasciatemi morire!

この作品も、歌曲作曲研究Ⅰで作曲した作品です。
元の作品はクラウディオ・モンテヴェルディの『アリアンナ』というオペラで歌われるアリアで、作詩はオッターヴィオ・リヌッチーニです。
直訳すると”私を死なせて”という意味になります。元々の作品を聴いて詩の対訳を読んだ時は、強い悲壮感や慟哭のようなものを感じましたが、僕は逆に死を受け入れる覚悟をした人間の明るい強さのようなものを表現したつもりです。
ある晴れやかな朝、病室の窓辺で心地よい春風に揺れるカーテンをイメージして書きました。
歌唱とピアノの演奏を快諾して下さった春日杏さんと小山めいさんに心から感謝しております。