島田 萌の世界

島田 萌(しまだ もえ)

神奈川県出身。作曲を久行敏彦氏に師事。
神奈川県立弥栄高等学校芸術科音楽専攻を卒業。
第21回TIAA全日本作曲家コンクール合唱部門及び室内楽部門において各々奨励賞を受賞。
洗足学園音楽大学音楽学部作曲コースを首席で卒業。同学の年度最優秀生として表彰される。
2022年奏楽堂日本歌曲コンクール第28回作曲部門において第三位を受賞。

卒業生メッセージ

島田 萌オフィシャルサイト

2017年度

作品発表演奏会
 日時:2018年1月15日(月)
 会場:洗足学園 前田ホール

Tout Commonce Ici

タイトルの「tout commonce ici(全てはここから始まる)」は、本作に一貫して現れるウェーブと、中心の音ととして設定した Fis 音を示しています。
作品は四つの部分から成っています。
まず、第一部では tom-tom と管楽器群のブレストーンによる小さなウェーブが中心に置かれ、その背後では弦楽器群の薄いクラスターが舞台上手から徐々に動き始めます。一番下手の第 1 ヴァイオリンが動くと同時に管楽器・打楽器も頂点を迎えます。
続く第二部では、二種類のクラスターがお互いにじわじわと近づいてすれ違います。クラスターは質感を微妙に変えながら、寄せては返しを絶えず繰り返します。そして全ての楽器が全く同じ高さの Fis 音に集まったあと、ヴィオラに到達したところで第三部に入ります。
第三部では、Fis 音を軸に作った 11 音の音列と、それを 4 度移高したもう一つの音列を使いました。さらにそれらの音列の中でグループを作って組み合わせ、グループ同士のリフレインによって生まれるリズムと、3 拍子-5 拍子の交替、ハーモニーの移り変わりとが混在し波打ちます。
終結部では、第一部から第三部までの要素が同時に提示され、静謐な空気の中に消えていきます。

2016年度

作品発表演奏会
 日時:2017年1月16日(月)
 会場:洗足学園 前田ホール

点はイエロー、線はブルー

自分は、自分の作品をどのようなものとしてとらえているのか。わたしは作曲をするとき、よくこんなことを考えるが、今作の制作中にその答えの一つのようなものが見つかった。
美術の分野に、パピエコレとアサンブラージュというコラージュの技法(作品)がある。簡単に説明すると、前者は異なる素材の紙片を、後者は立体物を組み合わせて作られた作品であるが、わたしはどうやら、音によるパピエコレ、アサンブラージュを作ろうとしているようだ。
今までに取り組んだコンテンポラリーな書法によるいくつかの作品では、好みの音と抽象的イメージを結びつけることや、音楽の構造に意識をむけていたが、その意識の潜在では、音のパピエコレ、アサンブラージュを作ろうとしていたように思う。
今作もこの目標のもと、音響効果を重視して取り組んだ。音楽の中身自体は、音とリズムそれぞれの周期を組み合わせてシンメトリックに整理した、シンプルな構造になっている。


作曲コース・作品発表会
 日時:2017年1月16日(月)
 会場:洗足学園 前田ホール

満ちる

今年の6月のはじめに夜の海を見に行った。くもりだったせいもあり空は灰色に霞んでおり、
海を挟んだ砂浜と空は区別がなく、不思議な感覚に陥ったのをよく覚えている。遠くの灯台からの光は、規則があるかないかわからぬ間隔で海に溶け、後ろを振り返ると正しく並んだ街の灯りが見えた。
6月のはじめというのは、ちょうど今作に取り組んでいた頃であった。そのため、わたしは無意識にこの日の光景を作品に反映させたかもしれない。それは主に選んだ音色や、「一つの音が発展しそれがまた一つの音に戻る」という作品のコンセプトにあらわれているように思う。ただ、あくまでもこれは制作後作品を俯瞰して感じたことであって、制作中はこのようなことを意識して取り組んだわけではないのでみなさんには好きなように聴いていただきたい。
最後に作品の構造について述べる。「満ちる」は最近のわたしの好みである、「まず無数の点が置かれ、それが線になってゆく」という展開の仕方をしている。この作品における”点”は、手鍵盤、足鍵盤およびストップから大きさや質を変えて現れ、トーンクラスターの太い線へと繋がってゆく。

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